「海外駐在に憧れるけど、駐在員ってどんな仕事をしてるんだろう?」
こんな疑問にお答えするために本記事では、
①海外駐在員の現地での役割
②私の海外駐在中の仕事内容
をご紹介します。
私の営業職での2カ国・8年半の海外駐在経験をもとに、具体事例も紹介してますので参考にして頂けると思います。
海外駐在員の役割
わざわざ日本から海外に駐在員を派遣する意味は何なのか?海外駐在員の役割は大きくは3つあります。
②日本本社との連携
③現地スタッフの人材育成
これらについて解説していきます。
拠点の経営を担う
駐在先のポジションは年齢や経験によって異なりますが、以下のようなポジションが一般的です。
①経営責任者(社長)
②部門責任者(部長・課長クラス)
③社長補佐
まだ拠点としての経験が浅く現地スタッフが育っていない場合は、駐在員が部課長を務めて実務を仕切ることがありますが、ある程度自立した拠点では部課長は現地スタッフに任せることが多いです。ただし現地スタッフに部課長を任せる場合は、社長補佐のような社長直下のポジションの駐在員を各部門に配置するケースが多いです。
駐在員の最も大切な役割は、本社の事業戦略や方向性を現地スタッフに伝え、現場の方向性がブレないようにコントロールすることです。
そのため会社の規模や経験に応じて①〜③のいずれかのポジションで駐在員を配備し、グローバル全社で目指す方向性に沿って経営の舵取りをします。いずれのポジションにおいても駐在員というのは「従業員」ではなく「経営メンバー」としての立ち回りが求められます。
日本本社との連携
海外の拠点では日本本社のグローバル戦略に則った経営が求められます。
①本社から発信される事業戦略の理解
②本社の事業戦略を踏まえた拠点の事業計画の策定
③拠点の事業計画を本社と合意形成
④本社と合意した事業計画達成のための実務推進
このように拠点運営は本社との密接な連携が必要となるため、駐在員が本社とのコミュニケーション促進の役割を担うとともに、日々のオペレーション管理も行い拠点の事業運営をコントロールします。
現地スタッフの人材育成
海外拠点運営の理想形は日本人駐在員を置かずに現地スタッフのみで運営することです。
駐在員を海外に派遣するには大きな費用が掛かります。駐在員を置かなければその分現地の収益になる、もしくはその分数人の現地スタッフを雇うことができるのです。
また現地スタッフにとって駐在員は自分たちの昇進のポジションを奪う侵略者という側面もあります。もしあなたの会社で役職者が海外から派遣されてくる外国人ばかりで自分が出世するポジションがなければモチベーションが上がらないですよね?
なので海外拠点は現地スタッフだけで運営するのが本来は健全な姿なのです。
そもそも駐在員が現地で仕事をする期間はほんの数年と限られています。一人の駐在員がスーパーマンのような働きぶりで業績が上がっても、その人が帰任した後にまた元通りに戻っては意味がありません。拠点の永続的な発展のためにはそこで働き続ける現地スタッフのレベルを底上げして、彼らの手で事業を拡大させなければならないのです。
そのため駐在員は自分が帰任するときには後任の駐在員を置かなくても拠点運営ができるようにするつもりで、現地スタッフに自分の持つ知識やノウハウを伝授し育てることが大切です。
私の海外駐在中の仕事内容
駐在員の主な役割はある程度イメージ頂けたかと思いますが、では具体的に日々どんな仕事をしているのか?私が営業として駐在していた時の仕事内容を例にご紹介します。
事業計画策定と四半期毎のレビュー
まず仕事の流れで言うと最初の仕事は年間の事業計画を策定することです。本社から発信されるグローバル戦略にのっとり、拠点の事業計画を定めます。
駐在員は本社の戦略方向性と現地の販売実態やオペレーションの両方を熟知している立場にありますので、駐在員が事業計画策定の舵取りをすることになります。
ただし計画策定の際は現地スタッフの営業責任者をしっかり巻き込むのがポイントです。実務遂行する主体は現地スタッフですので、駐在員だけで計画を作っても彼らの意思が入ってないと、ただの絵に描いた餅になってしまいますので。
拠点で作った事業計画を本社へ提案し承認されれば、その計画達成に向かって拠点が一丸となって販売活動を行います。
また年初に立てた事業計画の進捗は四半期毎にレビューします。3ヶ月経った時点で計画に対して遅れている場合は挽回計画をたてる、もしくは挽回できなければ下方修正の計画をたてて本社へ提案します。このように年3回のサイクルで事業計画の進捗レビューを行いながら計画達成を目指します。
日々の販売進捗管理
年間の事業計画は月別計画まで分解し、月別計画に対する進捗を毎日モニターします。
販売店毎に見て販売進捗が遅れてる店に対しては営業スタッフに状況を確認させる、今月の販促イベントの準備が予定通り進んでいるかマーケティング担当者に状況確認する、など計画の進捗には毎日目を配る必要があります。
販売進捗に大幅な遅れがある場合は、スタッフを集めて対応検討、場合によっては緊急対応の販促施策投入なども行います。営業駐在員であれば計画達成に対する強い執着を持ち、状況が厳しければタイムリーに挽回施策を打つという積極性と柔軟性が必要です。
部下からの報告・相談
言うまでもなく毎日同じ業務の繰り返しではなく、日々様々なことが起こり部下から報告・相談されますので、それらに的確に判断しながら対応していかなければなりません。
ここで的確な判断をタイムリーに下せるかどうかが駐在員の腕の見せ所になります。ここで「あれもこれも分からないから調べてからもう一回報告して」とか「ちょっと考えて回答するから待って」なんて言って判断をモタモタしてると、現地スタッフからの信頼を得ることはできません。
「絶対に抑えるべきポイント」と「部下に任せてよいポイント」を見極めてズバズバ判断していかないと、自分だけでなく部下の仕事も進まなくなりますので、判断力と決断力を養うことが重要になります。
本社への月次報告
毎月の販売結果を本社に報告しますが、私の場合はプレゼン資料を作って月次報告会で本社へ説明してました。
月次報告の類は、一般的に駐在員の本音としてはあまり前向きな仕事として捉えられてないことが多いです。往々にして本社は現場の実態を知りもしないのに、結果の数字が悪いと机上の理論だけでああだこうだと口出ししてくるからです。
こういう時に駐在員が口を揃えて言う決まり文句が「だったらお前が来てやってみろ!!」です。
販売店訪問
日本でも海外でも現場好きの人間にとって楽しいのは販売店回りの仕事です。
日頃からお客様と直接接している販売員から、商品の売れ行きやお客様から挙げられた声を聞くのは、市場動向を把握するために大切です。
また店内のレイアウト・商品ディスプレイ・お店独自のプロモーション活動などを定期的に確認することで、お店のパフォーマンスもチェックします。
営業担当者が定期的に販売店訪問しており、販売店訪問レポートを読んで状況把握もできるのですが、やはり自分の目で現場を見ることは現場感覚を養うためには欠かせません。レポートを読んでるだけだと日本にいるのと同じで現場にいる意味がありませんからね。
市場調査
他国で販売している商品を自国でも投入しようという場合、その商品がお客様に受け入れられるか、販売価格をいくらに設定すれば競争力と収益性がバランスするか、などを確認するために市場調査を行います。
サンプルとしてその商品を輸入し、販売店の人間やお客様に実際に使ってもらって意見を吸い上げます。その調査結果をもとに商品の需要度や適正価格を分析し、また商品のどの点が高く評価されたかによって、商品の売り文句やプロモーションのやり方を決めます。
収益管理
日本で仕事をしてると「利益を稼ぐ」という意識が希薄になりがちですが、駐在してると収益管理は絶対に欠かせません。お話しした通り駐在員には経営メンバーとしての視点を求められますので、特に営業駐在員は「いくら儲けたか」を常に意識しなければなりません。
販売台数目標を達成できたとしても、儲からない商品ばかり売れたり、販促費用を使い過ぎた場合は目標収益を達成できません。営業スタッフは月末が近づくと台数目標を達成するために、「儲からないけど売りやすい低価格商品」を必死に押し込む傾向がありますので、計画台数を達成したとしてもその販売の内訳までしっかり確認する必要があります。
また販売経費もしっかり管理が必要です。私の経験上、現地スタッフは台数は必死に追いかけるけど、お金に関しては無頓着な傾向があります。台数は達成したけどそのために広告宣伝費を計画以上に使ってしまったというのはよくありますので注意が必要です。
人事関連
日本と比べて海外では転職による人の流動が激しいです。せっかく育てた優秀なスタッフが同業他社に転職してしまうこともよくあります。なので自社に留めておきたいスタッフには将来の期待も織り込んだ評定を与える、今後期待するステップアッププランを明示するなど、優秀な人材確保にも気を配る必要があります。
また、そういう有望な人材には仕事をどんどん任せて少しずつ権限委譲もするようにしてました。裁量の幅を徐々に増やしてやることでスタッフの成長につながりますし、モチベーション向上にもつながります。
まとめ
海外駐在すると日本にいる時よりも責任も重くなり大変な仕事ではありますが、その分やりがいもある仕事だと思います。また日本にいる時よりも高い視点で物事を見れるようになりますので自分の成長にもつながります。
もしあなたに海外駐在のチャンスが回ってきた、あるいはこれから海外駐在ができるような仕事につきたいと思うなら、是非チャレンジすることをおすすめします。
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